たんたんターン 京都府

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Post Date / 2024.02.17 Sat

地域にどっぷりと浸かるゲストハウス

昔ながらの宮津のまちなみに現れるゲストハウス。

2023年11月12日、我々はオーナーの寺尾菜々さんを取材した。

玄関から「どうぞ!」と元気な声で、暖かいこたつへ導かれた。

ふるさと宮津で、なぜゲストハウスか
寺尾さんは宮津で生まれ育ち、宮津の高校を卒業後、都会への憧れから大阪へと移り住んだ。13年目に人生の転機が訪れる。宮津の実家から一本の電話が入り、母が病気であることを知らされたのである。
悩み抜いた末、実家に戻ると決めた。母の看病の傍ら、父が営んでいたバイク屋を手伝った。店舗を兼ねる実家には、全国各地から毎日のようにバイク乗りが訪れる。
「毎日知らない人がうちに来るのは、幼い頃から当たり前だった」と語る寺尾さん。戻った実家で多忙な日々を過ごすうちに、「自分の居場所を作りたい!」という思いを抱くようになった。そんなある日、寺尾さんは趣味のツーリングで泊まったゲストハウスに感銘を受けた。地域に溶け込んだ運営と、地元の人だからこそ知っているディープな街案内。実家近くの倉庫でこれをやろうと思い立ち、50人以上の友人らとできる限りDIYで改装作業を行った。

1年以上をかけ、ゲストハウス「ハチハウス」が完成したのだった。

地域にどっぷりと浸かる
たくさんの人が立ち上げに関わったハチハウスには、随所にたくさんの人の思いが感じられる。寺尾さんの好きなものがあふれており、利用者が、どっぷりと地域を感じられるための仕掛けと工夫が凝らさている。

手渡されるパンフレットには、ハチハウス周辺の昔ながらの飲食店などの情報が載っている。これを持って掲載されているお店に入れば、お店の側も「ああ、寺尾さんのとこから来たお客さんね」とわかるため、より良いサービスやコミュニケーションに繋がる。ハチハウスではあえて食事は提供していない。利用者には地域に出て、歩いて、地域のお店で食事してもらう。そこで魅力を肌で感じ、好きになってもらう。まるで地域に入り込むためのパスポートのようである。

また、コロナ前は、建物内にイベントができるスペースを設け、寺尾さんが好きな落語やプロレスなどのイベントを開催した。地域の方を招き入れることで利用者との交流が生まれるきっかけとなった。こうして、ハチハウスの存在が徐々に地域に浸透するようになった。

現在はコロナ禍を経てイベントスペースはなくなってしまったが、寺尾さんの好きなレトロ雑貨がズラリと並ぶ空間になっている。その多くが地域の方から寄せられたもの。

▲こたつを囲んでお話を伺った

▲本棚には海外でも人気のマンガがずらり

入口から入るとすぐにお茶の間のような交流スペースがある。真ん中にこたつ、壁際の本棚にはマンガが並び、実家のようにリラックスできる空間となっている。こたつとマンガは特に海外からの利用者にウケが良く、会話が弾み、交流が深まる。

ハチハウスには、海外からの渡航客が多い。特にフランス、ドイツ、イギリス、台湾、香港からの利用が多く、売り上げの半分以上を占める。写真の地図は、利用者に自身の出身国の場所をシールで貼ってもらったもの。

いろんな世界を見て
寺尾さんは英語が話せないとの事だが、当然、海外からのお客さんとも交流する。交流を重ねる中で、日本と海外とのギャップを感じ、今後を憂う。寺尾さんによれば、日本は島国であるためか、日本人同士でばかり話しているように感じられ、海外の人に比べ環境の変化に弱いように感じているそう。
寺尾さんは、取材した我々高校生に「日本にだけずっと居続けるのはもったいない。英語を学んで海外へ行って、色んな世界を見てきてほしい」と笑顔で語ってくれた。

署名:和田 凌太(清新高校 2年)