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Post Date / 2024.02.17 Sat

絶景を食べよう

宮津でチャレンジ精神を大切に活動している人がいる。

多賀美紀さんは10年間、大阪の民間企業で社長秘書として働いていたが、結婚をきっかけに退職。同郷の夫とともに、もう戻ってくることはないと思っていた宮津に帰郷した。

「地元であれば、安心して子育てができるのでは」と淡い期待を込めていたが、帰郷してしばらくは、大阪での生活とのギャップを感じ、将来に不安を抱き、後悔することもあった。

それでも、3人の子どもたちを育てる中で、徐々に働く意味を見つけたい、チャレンジしたいという思いが湧いてきた。秘書として近くで社長を見てきた経験もあり、今度は自ら事業を起こそうと志した。39歳の時だった。

「手に取ってくださった人に喜んでもらえるものを創りたい」と考えていたところ、観光の仕事に携わる夫の一言がヒントになり、キャンディを創ることにした。

キャンディであれば、観光客が売り場で手に取り味わう事もでき、長期保存ができるため、知り合いや社内へ配る土産物にもちょうど良い。また、誰かにあげた時に、ふとした会話のきっかけになる。「手に取る人が笑顔であふれることを想像して、わくわくしました」

『絶景を食べよう』

キャンディのデザインは自分で考え、宮津の天橋立はもちろん、安芸の宮島、陸前の松島といった日本三景や、伊根の舟屋などの絶景を取り入れた。中でも人気なのは期間限定で販売している“伊根ぶり“のキャンディだという。光に当てると見え方が変わるなど、小さな工夫がいくつも施されている。

製造は、組み飴が盛んな名古屋のキャンディメーカーに頼み、原料には京丹後の琴引きの塩を使い、丹後ちりめんのリボンをパッケージに飾り付けた。観光客向けに作ったが、地元の産品を使うことで、地元の人も巻き込んだ商品になっている。

3人の子どもを育てながら、なぜここまでやれるのか?

何もかもが初めてのチャレンジで、たくさんの不安や困難があったが、「周りの人に支えられたおかげで頑張ることができている」という。大切なのは「常にゴールを見据え、今なにをすべきなのか考え行動すること」。目標を見失わないよう、ノートや手帳に、その日その時思ったことを、とにかく書き出して言語化するよう心がけている。あとで壁に当たって落ち込んだ時でも、見返して思い出すことで、数日で立ち直ることができる。

また、以前は夜型の生活だったが、早起きして自分だけの時間を作るようになった。毎朝5時に起き、好きなドラマを見たり、ウォーキングやヨガを楽しむ。数年前からは考えられない変化だった。「自分の機嫌は自分で取る。自分を大切にすることが大切ですよね」。自分の楽しみを用意することで、今やるべきことを前に進める原動力が得られるのだ。

失敗を恐れず経験積んで

多賀さんは「世界に視野を広げ、無限にある選択に対して失敗を恐れずに挑戦し、沢山経験を積んでほしい」と語った。一人で抱えこまないように時には周りに上手く頼ることも大切だというアドバイスは実体験に基づいていた。色とりどりのキャンディを眺めながら、私は「さて自分は何から始めよう」と考えた。

署名:尾松 怜治(福知山成美高校 2年)