地元民が移住者さんにインタビューして作成!海の近くに住んでみたい、という方におすすめの2つの町をご紹介するコラムです。こちらでは京都府北部の「伊根町」がおすすめの理由について、実際の移住者さんの声を交えながらご紹介いたします。
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海の近くでの生活に憧れている方はきっと多いことでしょう。でも実際のところ、どんな生活になるの?不便はないの?など、気になることも多いと思います。本記事ではそんな疑問にお答えいたします。
目次
「舟屋」に代表される生活文化と日本の原風景が残る町 伊根町
伊根町は、京都府北部の日本海に面した人口約2,000人の小さな町です。しかし小規模な町でありながら、その独自の文化や自然環境が全国的に注目されている魅力的な地域でもあります。
中でも特に有名なのが重要伝統的建造物群保存地区に選定されている伊根浦の「舟屋」。1階が船のガレージ、2階が居住スペースという独特の構造で、伊根湾沿いに約230軒が連なっています。この、世界的にも珍しい景観が多くの観光客を魅了しており、近年は特に外国人観光客も含めて人気スポットとなっています。
また、新鮮な海産物も豊富で、特に伊根ブリやイカ、牡蠣などが有名です。豊富な魚介類を使った料理が楽しめ、移住者や観光客にとっても大きな魅力となっています。
伊根町は自然豊かな環境を持ち、海はもちろん、山もすぐそばにあり、海と山の間をぬうように町が形成されています。春には桜が咲き、秋には紅葉が山々を彩るなど、自然と共に暮らすことができる環境です。
伊根町へ移住して我が家をDIY生活!モントさんご家族
ご主人はアメリカのジョージア州出身、奥様は兵庫出身で、国際結婚をされたモントさんご家族。現在、4歳になる娘さんとともに、伊根町の海が見える家に移住され、生活されています。その後、奥様は役場職員に。そしてご主人は…日本への移住情報、DIY情報などを発信し、チャンネル登録者数1.58万人というYoutuber!地域の住宅事情も含め、世界に向けて移住情報を詳細に発信されています。
そんなモントさんご家族に、伊根町に移住した理由や魅力をインタビューしてみました。
おすすめの理由① 美しい舟屋の景観ときれいな海
伊根町についてお伝えする上で「舟屋」を欠かすことはできません。今や、テレビ等でもたびたび取り上げられることも増えたため、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。前述の通り、舟屋は漁業を生業とする生活文化から生まれた「舟のガレージ+住居」という独特の建物です。船に乗ったまま家に帰るスタイルを実現するために、舟屋は海に隣接するように建っている、いえむしろ「海の上に建っている」といってもいいでしょう。伊根湾を取り囲むように整然と並ぶ舟屋の風景は、その青い海とのコントラストと共に心に染み入るものがあります。
しかし、海にこれだけ近い建物なのに、波や潮は大丈夫なの?と思われるかもしれません。実は、伊根湾の入口には「青島」と呼ばれる島があり、この青島が天然の防波堤となって外海からの波を和らげているのです。さらに、北・東・西が山に囲まれた地形であることから風が抑えられる。つまり青島やこの山々がなければ、舟屋文化は成立しなかったと考えられます。伊根の景観は、奇跡のような自然環境の上に成り立っているのです。
アメリカ人であるモントさんはこの風景をどう感じておられるのでしょうか?
伊根町はまさに「深い田舎」ですね。近年、観光客が増え、徐々にお店は増えているものの、この独特の風情を壊すような開発はなされていません。
伊根町の中でも伊根地区は伊根湾を取り囲むように形成されたまちで、この海は「風情のある海」という印象ですが、伊根地区から少し離れると自然のままが残る断崖絶壁のカマヤ海岸や、砂浜もあります。
舟屋の景観だけでなく、泳げる海、遊べる海も。
このように、伊根町は見て感じる海、泳ぐ海、遊ぶ海、そしてもちろん魚介類を授けてくれる海、それぞれが揃っている場所とも言えます。今は伊根の海や文化を感じてみたい、という方は、伊根町観光協会さんが窓口になっている体験プログラムもありますので、チェックしてみてはいかがでしょうか?
舟屋は生活の場であり、実は観光地ではない
一方、近年観光客が増える中で、マナーの無い観光客に舟屋周辺の住民の方が困っているという事実もあります。勝手に見学したり休憩できるものだと思い込み、一般の住居である舟屋に無断で入ってしまうケースも。そのようなことがないよう、関係各所から「舟屋は生活の場」であることを呼びかけています。
いつまでもこの舟屋の生活文化を守っていくために、みんなで理解していく必要がありますね。
おすすめの理由② 近所の人が優しくフレンドリー
都市部から地方へ移住する際には、その地域での人間関係や、馴染めるかどうか、といった不安がつきものだと思います。特に田舎は独特の風習が強くて面倒そう、というイメージもよく聞かれます。実際のところ、どうなのでしょうか?
でも実際に住んでみたら、全くその心配は無くなりました。近所の方が優しくて、理解があって、みなさんフレンドリーなんです。娘も、都会にいた時よりも友達が多くなったかもしれません。
伊根保育園は子どもが50人以上(2024年現在)いらっしゃる、とのことで、娘さんも友達がたくさん出来ているようですね!人口2000人くらいの小さな町で、子どもが50人在籍しているのは驚きですね。
伊根に限らず、丹後では優しくおおらかな人が多い
奥様も、孤独を感じることなく地域に溶け込んでいらっしゃるようで、本当に安心しました。それとともに、やっぱり丹後(伊根町を含む京都府北部地域)は人が優しいのかなあ、と思った次第です。私も丹後出身、丹後在住で、以前から人が優しく、おおらかな人が多いと感じています。
伊根に訪れると印象的なのが、伊根湾の穏やかな波の音。ビーチに行くと、波音はザーっ…シャーっ…というイメージですが、伊根の港のあたりだとタポン…チャプン…という、なんとも言えない穏やかな音がするんです。こんな穏やかな空気感の中だと、人も穏やかになるのかもなあ、と思いますね。
おすすめの理由③ スローな空気感と静かで穏やかな環境
伊根町の空気感を作り出しているのは、海だけではありません。
都会にいたときは、夕日が綺麗というのも気にしていられないくらい忙しかったんですけど、今は綺麗だなあと思える余裕が出来ました。いい意味で時間がゆっくりなので、家族の時間も大切にできています。
伊根町は舟屋のイメージが強く、やはり海と隣り合わせの印象ですが、実は大部分が「山」。太鼓山に代表される山と、伊根湾や日本海といった海が隣接する地形なので、森と海が常に生活の中で感じられます。
波の音だけでなく、スズムシやコオロギといった虫の鳴き声、ウグイスやホトトギスなどの野鳥のさえずり、風が木々を揺らす音など、自然世界の音が心を落ち着かせてくれます。
山があるため地形に高低差があり、変化に富んだ景観も心に響きます。高さを活かした「棚田」での米作りと、その向こう側に見える海とのコントラストは絶景。e-bike(電動自転車)で周遊できるプランもあります。
おすすめの理由④ 空き家物件が安く入手でき、補助金もある
地方は地価が安く、物件が比較的安価で入手できるのは1つのメリットですが、伊根町はどうでしょうか?モントさんはご主人が空き家バンクをチェックするのがお好きだったこともあり、物件情報を見て問い合わせをされたそうです。
さて、気になるその物件の価格は…なんと、※約90万円!モントさんご主人のYoutubeでも「6,000ドルで家を購入」という形で紹介されていました。確かに、古くなった家を解体して処分することを考えると、買い手がつくことでwin-winになれるということですね。
※90万円は手続き全てを含んだ、だいたいの価格です
モントさんご夫婦は、ご主人がYoutubeでDIY情報を発信し、人気を集めておられますので、やはりクオリティもすごい!外から見ると古くなった家屋ですが、中に入ると海外の家に入ったような感覚でした。センス次第で、古い家でもここまで変わるのですね。
DIYしたモントさんのお宅をご紹介
せっかくですので、モントさん宅の内装をいくつかご紹介。古民家の風情と、海外のセンスが融合され、とてもおしゃれな空間になっています。建具1つとってもDIYとは思えないようなデザインです。
キッチンには様々な形のランプが吊り下げられ、とってもおしゃれ。
なんと欄間が玄関の照明に!
お風呂は映画でしか見たことがないような猫足のバスタブ。
2階天井は、古民家らしい大きな梁が残っていました。2階はまだまだこれからDIYされるそうです。
こんな風に、古い家を買って住む、というだけでなく、自分たちオリジナルの棲家をDIYで作り上げていく、その過程も田舎暮らしの魅力の1つなのですね。
移住関連の補助金も用意されています
また伊根町では空き家を購入した際のリフォーム費用の補助金があります。補助金をうまく活用して家の購入を検討されると良いと思います。
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おすすめの理由⑤ 海鮮が美味しい!新鮮な魚や野菜を売りに来てくれる
伊根町はやはり海と隣合わせの生活で、漁業が盛ん。やはり魚介類の恩恵は大きいと言えます。
ご近所さんも優しくて、イカとか、アジの刺身とかをくれたりします。
伊根町はもちろん、隣町の宮津市や京丹後市もやはり漁業が盛んな町。新鮮な魚介類には事欠かない地域です。伊根で育った人は、他地域の魚だと食べられない?というくらい、伊根の魚は新鮮で美味しい。新鮮な魚は干物にしてもやっぱり美味しいです。
もちろん、米作り、野菜作りも盛んに行われていますので、常に食味ランキング上位を取り続けているお米や、新鮮な野菜も日常的に手に入ります。たくさん取れた農作物は、近所におすそわけされることも。伊根町では「薦池大納言(こもいけだいなごん)」と呼ばれる大粒の小豆も有名です。
移動販売が町の生活を支えている
実は伊根町には商店はあり、日用品等の購入ができますが、スーパーマーケットはありません。ただ近年では「移動スーパー」と呼ばれる車が伊根町にも訪れ、魚などの食料品はもちろん、日常必要なものも売りに来てくれます。この移動販売車が地域のコミュニティの場にもなっており、住民が集まる瞬間でもあります。
もちろんそれだけでなく、モントさんご夫婦も生活に必要なものを「買いだめ」されているようです。隣町である宮津市府中地区のスーパーまでは車で15〜20分程度。さらに隣町の与謝野町のドラッグストアも車で20〜25分程度です。
そしてさらに!近年発表されたニュースによると、伊根町の宮津高校伊根分校跡地を利用し、ドラッグストアがオープンする予定になっています。薬だけでなく、食料品や日用品が購入できるドラッグストアですので、伊根町の住民の方にとって大切な存在になりそうです。
地方で暮らすなら車は必須!
移住して田舎暮らしをお考えの方ならすでにご存知かとは思いますが、地方で暮らす上では「車」が必須になります。どうしても、拠点から拠点への移動距離があり、かつ都市部のように公共交通網が豊富ではないため、車がないと生活しにくいと言えるでしょう。
私も普段丹後地域で生活していますので、車での移動のほうが逆に便利だなと常々感じています。都市部では電車があって便利なようですが、それほど距離が遠くなくても、駅のホームまで行く時間や乗り換えなどを含めると意外に時間がかかるなという印象があります。
田舎での車生活は、行く先々での駐車場を気にしなければならないケースも少なく、余分な時間を取られることがありません。公共交通が発達しているのを便利と考えるか、車のほうが便利と考えるか。これは価値観によって異なりそうです。
伊根町から隣町などの大きなスーパー等に向かう際には、常に海岸線を走ることになります。日常がドライブコースのようなイメージですね。
まとめ:自然と原風景の中でスローに暮らす伊根町
伊根町は昔ながらの日本の風景や「舟屋」に代表される独自の生活文化が色濃く残る地域です。豊かな自然環境が日々の生活を彩り、波の音や虫の声、山からの風といった自然の音が常に身近にあります。また、町の人々は温かく、都会から移住した人々も親しみやすい雰囲気に包まれて心地よく暮らしています。
海や山が近いため、新鮮な魚介類や地元産の野菜も豊富で、豊かな食生活が楽しめるのも伊根町ならではの魅力です。都会のような利便性は少ないものの、日用品の移動販売や車での買い出しで十分に生活ができ、必要なものが揃う環境です。
田舎ならではのスローな生活を満喫できる伊根町は、自然の中で穏やかに暮らしたい方におすすめの場所です。伊根町での生活が気になった方は、ぜひ一度足を運んでみて、空気感を味わってみてください。