食料を小さな農で自給し、ミッションや天職、ライフワークなどを通して積極的に社会に関わる“半農半X”という生き方があります。Uターンで綾部市に戻り、この生き方を提唱・実践している塩見さんは「天与の才を使い、創造的に生きることが豊かな暮らしに大切」と言います。 「雑多な情報が錯綜する中で生活しているためなのか、都会で暮らす人たちは、天与の才に気づきにくいのではないかと感じます。生物学者レイチェル・カーソンの著書に『The Sense of Wonder(自然の神秘さや不思議さに目を見張る感性)』自然と関わることの大切さを説いた本があります。季節の移ろいや花の香りなど、何気ない日常の変化に感動できる感性は、自らの天職発見に大事な役割を果たします。地方にはその感性を磨くことができる環境にあふれています。
移住者の受け入れ体制を整えながらも、ただ移住者の数が増えればいいと考える地方の市町村は、だんだん減っていくと思います。自然、人、伝統技術など、豊富にある地域の資源を、新たな取り組みや事業に生かすことができる。そういった新しい価値を生み出せる創造力のある人の積極的な移住を、地方の市町村は求めていくそうです」。 塩見さんは都会で暮らす人に向けて言います。「都会で積んだキャリアを京都北部で生かしてもらいたいです。例えば、会社を起こし7市町に新たな雇用を生み出すなど、地域に貢献してほしい。そういった人が増え、新しい会社が◯社できましたという伝え方ができれば、地域のさらなる発展にもつながります。人との繋がりを欲している都会の人は多いと感じています。地方は与えることを大事にする空間なので、繋がりを求める時代において、先端をいく空間でもあるのです」。 移住者と地域の環境がうまく結びつけば、一歩先の空間を京都府北部でつくることができるのかもしれません。
『じぶん資源とまち資源の見つけ方』綾部ローカルビジネスデザイン研究所編・発行 ¥500 | 「半農半Xという生き方【決定版】」ちくま文庫¥821 |