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Post Date / 2020.01.20 Mon

地域に関わりたい!を一歩踏み出す 京都北部プロジェクト博覧会

「京都北部プロジェクト博覧会」とは?

「京都北部プロジェクト博覧会(以後、プロ博)」は、京都北部7市町(※1)で活動する団体・プレーヤー・自治体と、ゲストトークやプロジェクト紹介、食を通じて交流し、地域とのつながりや関係をつくる場です。ちょっと立ち寄ったらついつい長居してしまい、半日いたら次につながる。参加者みんなで「京都北部へ行ってみたい!」と思えるような楽しく学びのある博覧会です。

(※1)京都北部7市町は、福知山市・舞鶴市・綾部市・宮津市・京丹後市・伊根町・与謝野町の総称です。

当日は、「株式会社ツナグム(京都移住計画)」の藤本和志と、「丹後暮らし探求舎」の坂田真慶さんが進行役を務めました。

藤本:僕たち「京都移住計画」は普段、京都府内各地への移住を伴走サポートをしているのですが、「移住」する以外にも、地域と関わる選択肢があったらいいなと思っています。プロ博を通して、京都北部で活動するプレーヤーのみなさんと出会っていただき、今日1日楽しく過ごしていただきながら、新たな関わりを見つけてもらえたら嬉しいです。

坂田:自分たちが “やりたい” と思うことや、好きなことから生まれたプロジェクトの種を、官民学で協働しながらどのように事業化していくのかを一緒に考えられたらと思っています。「京都北部へなかなか行く機会がない・・」というみなさんへ向けて、京都北部の暮らしや仕事を訪ねるツアーを7つ考えてきました!ブースも設けているので、ぜひ足を運んでいただきたいです。

オープニングのあとは、与謝野町長の山添藤真(やまぞえ・とうま)さんによる基調講演に移りました。

基調講演:「みえるまち」をつくりだす与謝野町の挑戦

山添藤真さん / 与謝野町長
1981年生まれ。江戸時代から続く丹後ちりめん織元の長男として育つ。2000年京都府立宮津高校卒業後、フランスに留学。2004年フランス国立建築大学パリ・マケラ校に入学し、都市設計から住宅政策まで、幅広く建築を学ぶ。2008年フランス国立社会学科高等研究員パリ校、2年次修了。2010年から2014年まで与謝野町議会議員を経て、2014年4月与謝野町長就任。
HP:http://yosano-branding.jp/

丹後半島の根元に位置する、人口22,000人のまち与謝野町。京都市からは車でおおよそ1時間40分のアクセスです。町の南部には大江山連峰を抱え、北部は天橋立を望む阿蘇海に面しています。

そんな与謝野町で、2015年からはじまった「与謝野ブランド戦略」。“みえるまち” をコンセプトに掲げ、人づくり、仕事づくり、賑わいづくり、誇りづくりに取り組んでいます。

山添町長:山も海もある豊かな自然環境に恵まれている与謝野町は、農業や丹後ちりめんなど、古くから「ものづくり」とともに発展してきました。そういった、与謝野町のものづくりの根幹にあたる部分や、源流となる部分をより多くの方に伝えるために付加価値をつけ、持続可能な地場産業の基盤を整えています。

例えば、農作物の加工過程で生まれた天然素材のおからや米ぬか、魚のあらで有機質の肥料を製造し、次に農作物を栽培する際に使用するという「自然循環型農業」の推進や、ホップやシルクを栽培し、6次産業化して市場へ流通させていくというもの。これらは同時に、新たな地域の雇用創出や後継者の育成をめざしています。

そのほかにも、宮津市にある天橋立や、日本海の海産物をめがけて訪れる観光客の周遊を促すべく、阿蘇海周辺を「阿蘇ベイエリア」と名付け、シーサイドパークや交流拠点の整備、自然アクティビティの造成など、観光産業の強化にも取り組んでいます。

山添町長:地場産業を育てるためには、官民学が一体となり多角的な視点で努力することが大切です。私たちは “みえるまち” をコンセプトに、安心安全の食材・素材づくり、加工、国内外への発信を一貫して行える体制づくりにチャレンジしています。

現在、ありとあらゆるものが東京に一極集中しているなかで、日本全国で地域の歴史・文化・産業を守るためのプロジェクトも進行しています。私たちをはじめ、そういった取り組みに携わる方々が、これからは日の目を見る時代になっていくと信じ、与謝野町も挑戦しつづけていきたいです。

山添町長の熱いお話に、会場からも質問や感想が飛び交います。

▲講演の内容はグラフィックレコーディングで記録していきます。

参加者:10代の若者向けにやっていることや、これからやっていきたいと考えていることはありますか?

山添町長:現在、小学校から高校における学習指導要領が全面的に改善されており、これまで私たちが受けてきた「覚える」ことに重点を置いた学習の仕方から、自分たちで「考える」教育のあり方にシフトしていく流れができています。そのなかで「サケの遡上」や「コウノトリの飛来」など、子どもたちの身近に起こっている事象から、与謝野町の自然資源の背景を伝えていくことで多角的な学びの環境をつくっていきたいです。

参加者:現在私は大学生なのですが、将来的に地元の町長になりたいと思っています。就任してから5年が経過するなかで、就任当時のビジョンに対して変化などはありましたか。

山添町長:町長は、住民の生活に近しい場所で喜びも悲しみも共有できる仕事だと思っています。私は、就任当初から「産業」と「子ども」にフォーカスして様々なチャレンジをしていきたいと考えていました。就任して5年が経ち、住民のみなさんとともに一歩ずつ積み重ねてきたことで、ようやく描いていたビジョンに近づいてきた感覚はあります。これからも、チャレンジが生まれる、応援できる風土を育んでいきたいです。

「プロジェクト博覧会ブース」のご紹介(前編)

プロ博実行委員会による「プロジェクト博覧会ブース」は、京都北部の食を楽しむスナックや木こり体験、ローカル観光の紹介、ふるさと兼業相談、移住相談など、開始早々にぎわいを見せていました。

▲参加者も木こりコスチュームで記念撮影。

▲実行委員の市瀬さんによる、薪割り体験ブース。

▲丹後食材やお酒を味わう「スナック京海(きよみ)」。

▲仕事を通して地域と関わる「ふるさと兼業相談所」。

つづいては、京都移住計画の田村篤史が聞き手となり、シンク・アンド・アクト株式会社代表取締役の伊澤 慎一(いざわ・しんいち)さんのお話です。

セミナー1:産学公民でつくる未来型の田舎暮らし

伊澤 慎一さん / シンク・アンド・アクト株式会社 代表取締役
1978年、福井県生まれ。一般社団法人京都スマートシティ推進協議会の構成社員。その他、舞鶴SDGs推進プロジェクト事務局として社員が常駐。京都を中心に社会課題を解決しうる持続可能な事業創出に挑戦中。
HP:https://www.thinkandact.jp/

全国で10自治体のみに与えられる「SDGs(※2)モデル事業」に舞鶴市が選定され、「舞鶴版SDGsリーダーシッププログラム」を開催するにあたり、事務局としてプロジェクトの運営に携わっている「シンク・アンド・アクト株式会社(以下、T&A)」。人材・組織開発、採用に関するコンサルティングや、新規事業開発時のマネジメントを得意としている会社です。

当プロジェクトに参画するにあたり、地元企業・住民のニーズをヒアリングするため、T&Aで働く社員のひとりが舞鶴市に常駐。そのほかにも、行政や民間企業、大学、そして、住民と協働しながら様々なプロジェクトを進めています。同社代表取締役の伊澤さんからこれまでの取り組みをお聞きし、 “未来型” の田舎暮らしについて考える時間となりました。(事業実績はこちら:https://www.thinkandact.jp/works

(※2)SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)・・2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。(外務省HPより一部抜粋)

伊澤さん:現在、舞鶴市にあるコワーキングスペース「Coworkation Village MAIZURU」を活用しながら、観光で訪れる(バケーション)+働く(ワーク)という「ワーケーション」の導線づくりについて検討を進めているところです。新しく社員が入社した時や、社長が変わった時のチームビルディングを行うための合宿場所としての利用や、訪れた先で副業・兼業として関われる新たな仕事が生まれるような流れができたら理想だと考えています。今後は、モニターツアーの実施も予定しています。

そのほかにも、IT人材育成の一環として中学生向けにプログラミングの授業を行うなど、コワーキングスペースを活用した教育事業も進行中なのだとか。

ここからは、進行役の田村とのディスカッションへとうつります。

田村: セミナーのタイトルにもなっている “未来型” の田舎暮らしとは、どんな暮らしだと思いますか?

伊澤さん:暮らし方については、それが現在であっても未来であっても、都会であっても田舎であっても、大切にするべきことは変わらないように思います。現代は、YouTubeやAmazonもありますし、昔よりも田舎の暮らしは便利になりました。そういう意味でも “心の豊かさ” が、これから暮らしていくうえでいちばんの指標になると思いますね。いくつかのコミュニティに所属することも、心が豊かに暮らせるヒントかもしれません。

田村:自治体や企業、住民、あるいは学生が、今後まちを「共創」していくために必要なことはなんだと思いますか?

伊澤さん:自治体は、短期的な数値目標だけでなく、長期的なビジョンをもてるかどうか、また、都市部にある大企業だけではなく、やる気のある地元のプレーヤーを信じられるかだと思います。企業は、補助金や助成金が着火剤であることを認識できるかどうか。住民は、「この地域には何もないから・・」と簡単に言ってしまわずに、地域に誇りや自信をもてるかどうか。それぞれが連携しあいながら、地元の若手人材を育てていくことが必要だと考えています。

「プロジェクト博覧会ブース」のご紹介(後編)

▲福知山公立大学の学生企画チーム「DOKKO」による「進学移住者支援プロジェクト」ブース。

▲市職員による京都北部7市町への移住相談ブース。

▲迷った方はまずはここへ。早わかりプロジェクト博覧会!

つづいては、坂田さんが進行役となり、プロ博実行委員メンバー3名によるクロストークです。

セミナー2:UIターンで始めた地域プロジェクト

スピーカーは、(株)大滝工務店代表取締役/(一社)KOKIN代表理事の大滝雄介さん(舞鶴市・Uターン)、里山ゲストハウスクチュール オーナー/旅行会社MATATABI代表の工忠 照幸さん(綾部市・Iターン)、もんどりや代表の杉本 健治さん(伊根町・Iターン)の3名です。
・KOKIN:https://kokin.online/
・里山ゲストハウスクチュール:https://guesthouse-couture.com/
・もんどりや:https://mondoriya.com/

まずは、それぞれの取り組みを紹介していただき、その後、クロストークがはじまりました。

坂田:こうして京都北部と都市部を行き来するなかで、みなさんがこれからやっていきたいと考えていることは何ですか。

大滝:有名な観光地だけでなく、舞鶴にある人や場所の魅力にスポットをあてて、ローカル観光のツアー開発をしていきたいと考えています。そういった事業を実施していくにあたり、地域でコーディネーターとして動ける人材の育成をしていけるといいなと思います。

工忠:現在、大滝さんと一緒に「天職観光 〜暮らし方を考える旅〜」というプログラムを舞鶴・綾部で実施しているのですが、このツアーに参加してくれるような “観光以上・移住未満” の関わりを求めて地域を訪れてくれる人を増やしていきたいです。

杉本:今日、会場で皆さんに楽しんでいただいた「スナック京海」のプロジェクトを、京都市内で具体的に進めていきたいと考えています。京都北部のファンを増やしていけるような、京都北部の情報が集まるような場やコミュニティづくりをしていきたいですね!

坂田:仕事やプロジェクトなど現在やっていることについて、UIターンした当初はどのくらいイメージできていましたか。

大滝:「KOKIN」では、舞鶴に “あったらいいな” と思っていたことや、自分たちがやりたいことをやっているので、“やっとここまでできた” という感覚です。カフェやゲストハウスは、ほかの地域を訪れるなかで舞鶴にもほしいと思っていました。

工忠:「ゲストハウスをやりたい!」というのは、移住前から考えていたことですが、それ以外は綾部に来て、地域の方との関わりからはじまった仕事やプロジェクトが多いですね。

杉本:地域おこし協力隊として訪れた当初は、カフェをやりたい!と話していました。ですが、地域の課題や訪れる方のニーズと向き合っていくうちに、水産資源を活かした加工品づくりへたどり着きました。

坂田:UIターンをして感じる自身の変化や、移住後のライフスタイルについて教えてください。

大滝:18時には仕事が終わりますし、家も職場と近いので圧倒的に時間が増えました。その時間を、家族との時間や「KOKIN」の活動、これからやっていきたいことへの準備期間としてあてています。「天職観光」では、そういった暮らしの様子を見学に来てもらえたら嬉しいです。

工忠:カレンダーを見ると予定だらけになっていることが多々あります。僕が住んでいるのは里山なので、仕事以外にも草刈りや消防団など、地域活動もたくさんあります。スローライフとは程遠い生活ですね(笑)

杉本:都市部で暮らしていた頃は、なんでも消費する生活だったのですが、伊根に移住してからは “つくる” 側になることが増えました。若者の娯楽と呼べるものが多くはないので、自分たちでイベントを企画することもあります。自分たちの楽しみを “つくる” という発想ですね。あと、京都北部は物理的に遠いと思われがちですが、現場を見ると心理的な距離が近くなるので、ぜひ一度訪れていただけると嬉しいです!

最後に、プロ博事務局によるワークショップです。

ワークショップ: 京都北部とつながるワークショップ

プロ博実行委員の市瀬さんから、京都北部の「仕事」や「就職」に関する状況をお話いただき、参加された学生や会社員、教授、クリエイターと一緒に解決策を考える時間となりました。

たとえば、学生がインターンシップやアルバイト的に地域と関わる仕組みがつくれないか、デザイナーが旅をしながら仕事ができる・新たな仕事が生まれる受け皿がつくれないか・・・などなど、これから京都北部で試してみたいアイデアがたくさん生まれました。

▲京都北部7市町おなじみの「セブン」ポーズで記念撮影をし、「京都北部プロジェクト博覧会」は幕を閉じました。

「京都北部プロジェクト博覧会」が目指す最終的なゴールは、それぞれの地域への「移住」を考えてもらうことなのかもしれません。ですが、地域の魅力を発信したり、盛り上げる方法を一緒に考えたり、都市に住まいながら出身地や地域と関わる選択肢があることを、もっとたくさんの人に知ってもらえたらうれしいです。京都北部にUIターンした人の暮らしや仕事に出会う、「暮らし仕事の探求ツアー」にも、ぜひ参加してみてくださいね!

 

 

■【リクエスト随時開催】暮らし仕事の探求ツアー(京都北部の生き方を知る)

▼詳細は京都移住コンシェルジュHPへ
https://concierge.kyoto-iju.com/event/hokubu7citytours

▼京都移住コンシェルジュ
https://concierge.kyoto-iju.com

問合せ
事業担当:株式会社ツナグム 藤本 和志(fujimoto@tunagum.com)

記事の作成に関わってくれたクリエイター