パリから移住してきたデザイナー
舞鶴市HPの移住者の紹介ページを見ていると、「パリからの移住」という印象的なタイトルが目に飛び込んできた。デザイナーとして世界を舞台にして活動している特徴的な経歴に興味をもち、河崎吉宏さんに取材を申し込んだ。
案内された場所は、元ガソリンスタンドを改装したアトリエ。自身が手掛けるブランドの服を製作するアトリエは、見た目はガソリンスタンドだが、中はまるでパリに来たかと感じるような別世界。河崎さんの手掛ける服に囲まれ、話を聞いた。
羊飼いの服を現代に
河崎さんは、日本でデザイナーの仕事をしたのち、服や絵を売りながら世界一周。再び日本に戻り、デザイナーとしての仕事を再開。日本での仕事がフランス政府に認められ、能力才能ビザを取得してフランスに仕事の拠点を移した。その後、自らのファッションブランド「HALLELUJAH」(ハレルヤ)を設立した。
「HALLELUJAH」では、100〜200年前に実際にヨーロッパで着られていたベルギーリネンと呼ばれる羊飼いの作業服を再利用、または再構築している。デザインから縫製まで手作りで、丁寧に仕立てられている。
また、ブランドのコンセプトは「母から子に受け継がれる服を」であり、世代に渡って大切に着てほしいという思いを持って活動されている。日本だけではなく世界中にファンを持ち、一過性の流行で終わらない長く愛されるブランドである。
▲HALLELUJAHの服を見せる河崎さん
求めるまちが舞鶴に
舞鶴への移住は、築百数年の曽祖父の家を取り壊すことになったことがきっかけだった。小さい頃通った思い出が残る場所であったため、寂しく思い、家を引き取ることを決意したのだという。
畑や田んぼなどに囲まれた自給自足に近い生活。舞鶴の良い点は、自分の原点にあった暮らしができることにある。
地域の方が野菜をくれることもある。このような地域住民どうしの関係性はとても贅沢なものであり、理想の場所だと感じている。
イメージに縛られない町
これからの舞鶴がどう変わってほしいかを聞いてみると、「変わらなくていい。イメージでキツく縛られない場所であり、そのままであってほしい」という答えが返ってきた。
「例えば、京都といえば寺社仏閣や町家があって、そこに住んでいる人は、その景観を壊さないように暮らしていると思う。舞鶴にはそのような強いイメージがないから、外から縛られず気兼ねなくやりたいことにチャレンジできる。見方によっては、これは舞鶴の良いところではないのかな」
河崎さんは私たちにそう問いかけた。
視野を広げ、興味を持ったことや挑戦してみたいと思う気持ちに蓋をするのではなく、実際に行動することが大切なのだなと思った。「何事も挑戦し、持続させることが大切」という話からも、一度きりで終わらせるのではなく、続けることで、その経験が自分の糧となるのだと気づかされた。これからの人生を生きる上で、背中を押してもらったように感じた。
取材者 柏原 葵